きっかけは大阪市西区二児置き去り死事件
ドラマ『やさしい花』制作のきっかけとなったのは、2010年に起きた「大阪市西区二児置き去り死事件」。大阪府大阪市西区のマンションで2児(3歳女児と1歳9ヶ月男児)が23歳母親の育児放棄によって餓死した。
当初は、風俗に勤め子どもを置き去りにする鬼のような母として、センセーショナルに報道された。しかし、メディアやルポライターなどが取材を進めると、母親は子育てサークルにも通い、布オムツを使い、離乳食を手作りするなど、子どもを愛し、頑張って育てていた事実が出てくる。
さらに、母親自身も幼少期にネグレクトを受け、親とは疎遠。夫との離婚を決める家族会議では「借金はしっかり返す」「家族には甘えません」「しっかり働きます」などの誓約書を書かされていた。養育費ももらえず、児童扶養手当なども受給できず、頼れる親族もおらず、幼子2人をたった1人で育てることになったのだ。
この事件を受け、NHK大阪放送局から、安田のもとに「児童虐待に関心が薄い人たちにも、ドラマを通じて考えてもらいたいので、オリジナル脚本を書いてください」と依頼が来た。
安田は、当時から母親だけが非難される風潮に疑問を持っていたという。
「実際の経緯を知ると、そもそも虐待が起こってしまう背景をもっと理解しなければいけないと思いました」
と語っている。