親の孤立を防ぐために
児童虐待に至る原因は様々だが、なによりも周囲からの「孤立」が最大の引き金になるという。子育ての悩みを共有し、「あるある!」と親同士が共感する場があるだけでも、とても救われる、と安田は語る。
「育児相談で『うちの子のおしっこが青くならないんです』という相談があるそうです。コマーシャルでオムツが青くなるのを見て、そうなるものだと思いこんでしまってる。充分な知識がないまま子育てを始めて、身近に聞ける人がおらず、孤立してる親が少なくない模様です」
今ではSNSなどを通じて、離れた人ともつながりやすくなった。しかし実際の子育てにおいては、身近な頼れる人が必要だ。
そのため各地域では、親の孤立を防ぐための仕組みづくりに取り組んでいる。その中で、この『やさしい花』も、子育ての悩みを共有するツールとして活用され、その輪を広げているという。
一番長く続いている上映活用は、大阪市西淀川区の「子育てを応援する担い手育成・地域連携事業」受託者であるNPO法人「にしよどにこネット」による「『やさしい花』上映会&しゃべり場カフェ」だ。
2013年からスタートし、今年10月の開催で15回目を数える。継続して上映することで、気づきも増えてきた。「ひどい親」「私には助けられない」で終わるのではなく、「もしも自分が彼女だったら」という意見交換を重ねるうちに、様々な立場の意見が出るようになった。具体的な子育て支援のアイデアも生まれた。
今回取材をした岸和田市の「やさしい花トーク会&上映会」も、「ここからkit」代表理事の長谷川秀美が、「にしよどにこネット」の上映会を知ったことから企画された。自分たちも、子育ての現状をわかりやすく共有するために、地域の方とこのドラマを観たい、という気持ちからはじまったのだという。
「石野真子さんが演じる友子のように声をかけるのは勇気が要ることですが、それが誰かを救うこともあります。またぜひ上映会を行い、自分なら何ができるかを考える人が増えてくれればと思います。」
と長谷川は語った。