優希の笑顔を引き出したもの
愛莉が優希の似顔絵を描き、本人に渡したいという思いを叶えられるよう、和沙は手伝うことを決めた。彼女はライオンの着ぐるみを着た状態であれば、愛莉が優希に似顔絵を描いて渡せるのではないかと考えた。
「喋りづらいことってあるっしょ、人間として。でも喋りやすいことってあるっしょ、ライオンとして」
自分の大切な思いを伝えるときは相手の顔を見て、直接言う方が伝わりやすいし、重要なことは会って話すべきという考え方は社会に根付いている。そうはいっても、相手にストレートに伝えられることばかりではない。
愛莉はライオンになりきることで優希の似顔絵を描き、渡すことができた。その結果、優希に喜んでもらえただけでなく、「嬉しい。こんな綺麗に描いてもらえて」と聞きたかった言葉を言ってもらえた。絵には作者の思いが投影されるといわれるが、優希は送り主のあたたかい思いを受け取り、笑顔になったのだろう。