道長の本当の思いを知っているのは、まひろだけ…。
三条天皇が亡くなり、後ろ盾を失った敦明親王は自ら東宮を辞退。一方、新たに即位した後一条天皇(橋本偉成)の摂政となった道長は名実ともに国家の頂点に立つ。だが、道長が摂政の座についていたのはわずか1年ほど。
その本当の理由はわからない。しかし、本作においてはずっとそばで支えてくれていた公任(町田啓太)に引導を渡されたのが大きかったのではないか。摂政と左大臣を兼任し、陣の定めに顔を出し続けていた道長。
それは皆の意見を聞き、政治に反映させるという信念に基づいている。だが、今や道長は誰も逆らえぬほどの地位にまで上り詰めた。道長がよくとも、皆は遠慮して意見など出せない。友人として公任はそのことを道長に気づかせようとしたのだ。
娘である彰子(見上愛)と妍子(倉沢杏菜)の両方から「私は父上の政治の道具にされた」と反発されたのも父としては胸が痛かったはず。まひろとの約束を果たすためとはいえ、犠牲にしてきたものは大きかった。
道長は父・兼家(段田安則)を尊敬する気持ちはあれど、自分は違う道を歩み、父の時代に築かれた過去の遺物を壊そうとしてきた。しかし、気づけば父が歩んだ道を自分も辿り、民のための政を目指して突き進んでいたはずが、手元に残ったのは周りを従わせる地位と権力だけ。自分自身が過去の遺物となっていることに気づいた道長は、頼通に摂政の座を譲ることを決意する。
そんな道長に「道長様のお気持ちがすぐに頼通様に伝わらなくても、いずれ気付かれるやもしれませぬ。そして次の代、その次の代と一人で成せなかったことも、時を経れば成せるやもしれませぬ。私はそれを念じております」と語りかけるまひろ。
道長の本当の思いを知っているのは、まひろだけだ。そのまひろだからこそ、できる寄り添い方だった。