組織の色に染まれない人が社会で生きていくためには?
克弥は小説を書けなくなり、社会になじむしか生きる方法がないと判断したのだと思う。その結果、克弥は仕事だけではなく、妻と娘にも恵まれた。現在は生き方も家族の在り方も多様化しているものの、男性は家族をもって一人前という考え方が根付いていた時代もあった。妻子をもつ克弥について社会になじんでいると誰もが認めるはずだ。
私たちが生きている社会は優しくなんてないのかもしれない。多様性を謳ってはいるけれど、社会の色や所属している組織の色に染まれない人は変わり者として扱われる。
広海がかつて経験したように「あいつ変な奴」と指をさす大人はあまりいない。しかし、周囲から浮いていると一線を引かれたり、社会に調和できないことを叱責されたりする。
社会で生きることの厳しさは、広海と虎之介(望月歩)が配膳のアルバイトをするシーンに投影されている。広海は洗濯機の購入費を貯めるためにアルバイトをはじめたが、雇用先にはそんな事情は関係ない。職場では貢献してくれる人が求められるし、うまくこなせなければ継続はむずかしくなる。実際、虎ノ介と広海はアルバイト先で謝罪するしかなかったようだ。