自らの固定観念を突き崩すために、
凛のブッかましが始まる
頼人と同じくらいグッときたのが、凛と30年後の姿であるオバサンの物語である。オジサンが30年前の頼人に会いに行ったことを知り、自分も人生を変える権利があるはずだと令和の時代に向かったオバサン。
母から継いだクリーニング屋を閉め、ネット通販のアパレル会社の社長として成功を収めていた。しかし、あのタイミングで結婚や妊娠をせず、仕事に打ち込んでいたら、事業はもっと軌道に乗っていたのではないか――そんな思いがずっと心に残っていたのだ。
「普通の家庭を築きたい」という固定観念に縛られていたことを自覚した凛は、自らを変えるために、なんと恋愛リアリティーショー『行かないで!かぐや姫』に出演を決意。頼人もオバサンも驚く、凛のブッかましが始まるのだ。
『行かないで!かぐや姫』の放送終了後、凛はリメイク服の販売に本腰を入れる。そのスピードの早さにオバサン自身も「あなた本当に変わったわね」と関心するのだが、凛は未来の自分をまっすぐに見つめてこう答える。
「あなたに追いつきたいからね」
「目標ができたから。あなた、っていう目標が」
夢に突き進む頼人、そしてなによりも、好きなことに邁進する未来の自分自身に、凛は勇気をもらっていたのだ。もともとオバサン自身も、現状への悔いがあったからこそタイムスリップしてきた。
そんな中で、若き日の自分から「あなたに追いつきたい」と肯定されたことは、どんな後悔をも吹っ飛ばす瞬間だったのではないか。なにか足りないと悔いていた今の自分を褒めてあげてもいいのだと思えたはずだ。