空中分解寸前となってしまった科学部
この一件により、空中分解寸前となってしまった科学部。1人実験を続ける岳人は、諦めることには慣れていたつもりだったけど、頑張ったことを諦めるのは辛い、と藤竹に吐露する。子どもの頃、諦めることが辛くなって頑張ること自体を辞めた岳人が、いま一度頑張った。
でも、また諦めなければいけないかもしれない状況に直面している。子どもの頃の傷も深く残っているだろうが、大人になってから当時の痛みも思い出して負う新しい傷は、きっとまた違う痛みを伴う。
さらに岳人は、「あんたみたいになれんじゃねぇか」と夢を見ていたと続ける。藤竹にとって伊之瀬(長谷川初範)がそうであったように、岳人にとって藤竹もまた“その後の人生を変える恩師”になっていた。このときの藤竹のハッとするような表情は、そのことにまだ気づいていなかったと言わんばかりだ。
「辞めるつもりですか? 実験」と問いかける藤竹の声には、いつもの穏やかさはなかった。怒っているわけではなく、余裕がなくなっているんだろう。生徒の人生を良くも悪くも変えてしまう可能性がある教師という仕事の重圧を、初めてきちんと認識した瞬間だったのかもしれない。
メテオライトは、特に「大気圏を通っても燃え尽きなかった隕石」を指す場合もあるという。岳人の、そして科学部の学会発表への思いの火が、このまま燃え尽きないといいのだが。
(文・あまのさき)
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