噛めば噛むほど味が出る悪役たち
この情報社会においては、普通の人間でも勉強さえすれば、壮大な犯罪計画を立てられる。もちろん、実行するかしないかはまた別だ。
祐子は流されるまま、ここまでやってきたが、自分のせいで強盗の被害に遭った女性に対しては申し訳ないという気持ちがあるし、蒲池(加治将樹)が湖に沈む光景はたびたびフラッシュバックしていた。そんな風に、普通は気が咎めるものだが、悦子は「自分のことだけ気にしてればいいのよ」という。
自分さえ良ければいい。それは闇バイトに手を染める若者が後をたたない今の日本全体を覆っているリアルな空気感なのかもしれない。もちろん、お金欲しさに安易に手を染めた結果、そこから抜け出せなくなるというパターンが多いのかもしれないが、やっぱりどこかぶっ飛んでいないとなかなかそっちの道には進めないものだ。
本作に出てくる悪役たちはそのバランスが見事だった。敢えてまだ名前が知れ渡っていない俳優陣を起用することで、一見どこにでもいそうなリアリティが漂っている。だけど、あまりにも普通の人だったらドラマとして面白くない。そこで、本作は各々のキャラクターに身近にいそうでいない絶妙な個性を付与している。
真面目にアンガーマネジメントに努める、人間味に溢れた坂本。穏やかだけど何を考えているかわからない恐ろしさがあって、ここぞという時には躊躇なく人に危害を加える末次(内田健司)。何をしでかすかわからない危うさと、祖母のために3000万を取り返そうとしたピュアなところが表裏一体のソラ。
どの悪役たちも噛めば噛むほど味が出る奥深いキャラクターだ。そして演じているのが知名度に反して巧みな演技者ばかりだったから、それぞれの役が驚くほどにハマっていて、最後まで目が離せなかった。きっとこの本作で爪痕を残した彼らの姿は今後、色んな作品で見かけることになるだろう。