ホーム » 投稿 » ドラマ » 斎藤工”進平”がまとう死の匂いとは? 池田エライザとのキスシーンに動揺させられたワケ。『海に眠るダイヤモンド』第5話考察 » Page 2

「終わりの始まり」を意識せざるを得ない第5話

『海に眠るダイヤモンド』第5話 ©TBSスパークル/TBS
『海に眠るダイヤモンド』第5話 ©TBSスパークル/TBS

 特に、この第5話は「終わりの始まり」を意識せざるを得ない回だった。1958年12月、一平(國村隼)たち端島炭鉱の鉱員は「全日本炭鉱労働組合(通称:全日炭)」の意向に従い、期末手当の賃上げを求める“部分ストライキ”を行なう。

 これに対して、鉄平(神木隆之介)たち鷹羽鉱業側は、鉱員たちの要求を退け、鉱山のロックアウトを実施。ロックアウトされると賃金自体が出ないため、生活に困る鉱員たちは暴動を起こし、怪我人が続出する事態となる。

 鷹羽鉱業側の先頭に立ち、鉱員たちを制止していたのは鉄平だ。だが、ひとたび暴動が収まれば、骨折した鉄平の周りには笑顔の鉱員たちが集まってくる。それは鉄平の人柄によるものだろう。「一島一家(島全体が一つの家族)」という端島に根付く考えに基づき、自分たちを上から押さえつけるのではなく、対等な目線で向き合ってくれる鉄平に鉱員たちは信頼を置いている。

 そんな彼らが代わりに、怒りの矛先を向けるのは賢将(清水尋也)だ。ロックアウトの際、封鎖には普通鉄線が使われていたが、数箇所だけ有刺鉄線が残されており、鉱員たちは賢将に疑いの目を向ける。

 しかし、直前に父である炭鉱長の辰雄(沢村一樹)に掛け合って、有刺鉄線から普通鉄線に変えたのは賢将。それに、彼はこれまでも鉄平と社宅の割り当てに関する新しい制度の導入を検討するなど、鉱員たちが働く環境をより良くしようと努めてきた。

 その思いが鉱員たちに伝わり切っていないのは辰雄の影響も大きい。島の人たちに愛されていた前炭鉱長とは違い、鉱員たちと線を引いて馴れ合おうとしない辰雄への不満がそのまま息子である賢将に向けられているのだ。

 けれど、最初に線を引いたのはどちらなのだろう。賢将の母は「こんな離島、耐えられない」と言って家を出て行ったというが、幹部職員の妻として周囲から距離を置かれ、「一島一家」に入れてもらえなかったことが原因とも考えられる。辰雄の“島嫌い”はそういうところから来るのかもしれない。

1 2 3 4
error: Content is protected !!