川口春奈&松下洸平の距離感に感動…白黒つけない結末が共感を呼んだワケ。ドラマ『9ボーダー』最終話考察&感想レビュー
text by 菜本かな
川口春奈がTBS金ドラ初主演。木南晴夏&畑芽育と3姉妹役を演じるドラマ『9ボーダー』。19歳、29歳、39歳…各年代のラストイヤーで、3姉妹がモヤり、焦りながら、自分の生きる道を模索するヒューマンラブストーリー。今回は最終話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
テーマの根幹は“グレーを許すこと”
『9ボーダー』(TBS系)が描きたかったのは、“グレーを許す”ということだったのかもしれない。わたしたちは、つい白黒はっきりつけたくなってしまうけれど、答えは1つじゃなくていい。大庭家三姉妹が選んだラストからは、そんなメッセージが伝わってくるようだった。
まず、海外赴任する朔(井之脇海)について行けないから…とプロポーズを断り、別れを選択しようとしていた六月(木南晴夏)。たしかに、一緒にいられないのなら、別れた方がいいと考えてしまう気持ちもわかる。
距離の近さがすべてではないけれど、やっぱり結婚したら同居するのがスタンダードな気がするし、それが叶えられないのなら結婚はおろか交際を続けるのもむずかしい、と。
そんなとき、七苗(川口春奈)の「答えって、ゼロか1かじゃないよ」という言葉が胸に響く。「海外赴任について行けない=結婚できない=別れた方がいい」と、どんどん選択肢を狭めてしまいがちだけれど、“グレーゾーン”に位置する選択ってたくさん存在する。
たとえば、結婚はするけど海外にはついて行かないとか。反対に、結婚はしないけど交際は続けるとか。すべてを捨てる必要はないのだ。
最終的に、六月がした決断は限りなくグレーに近いものだった。離れていても交際は続ける。そして、お互いの国を行き来する。数年後にどこの国に住むかを考える。籍を入れるか入れないかは、ゆっくり考えていく。
「そういう自由を考えるのが大人じゃない?」と言って笑った六月の姿は、これまでのどの瞬間よりも幸せそうに見えた。