朔を受け入れない理由を探していた六月
恋をするって、楽しいことばかりじゃない。誰かを好きになると心を乱されるし、相手がいるものだから自分の気持ちだけではどうにもならなかったりする。
だからこそ、大好きだった夫と別れることになった六月が、「また誰かに期待して、傷つけられたら怖い」「恋なんて有効期限があるものに振り回されたくない」と“セルフハッピー”な生き方を選択しようとしているのも痛いほどよく分かる。
そうすれば、人生の舵を他人に委ねなくてすむ。期待をしなければ、裏切られることもない。でも、やっぱりどこか寂しい。
長年連れ添った夫を失った喪失感を抱えながら踏ん張っているときに、まっすぐに愛をぶつけてくれる人がいたら、惹かれるのは時間の問題ではないだろうか。六月の心にぽっかりと空いた穴を、たっぷりの愛情で満たそうとしてくれている朔。
しかし、六月は彼を受け入れない理由ばかりを探していた。上司だからとか、バツイチだとか、もう傷つきたくないとか。
でも、朔が怪我をして入院したことを聞き、部屋着のまま慌てて家を飛び出したとき、六月は本当の気持ちに気づいたのだろう。もう、傷つくかもしれないから……と身を引けるような段階ではない。また傷ついてもいいから、朔の胸に飛び込みたいと思うくらいに、愛が膨らんでしまっているのだ。