コウタロウとは正反対の柴田
ただ、やっぱり柴田よりもコウタロウでいるときの方が、幸せそうに見えてしまうのはなぜだろう。柴田は仕事人間で、大事な婚約者が結婚式の相談をしても、仕事を優先させたりと、どこかトゲがあるように見えた。しかし、コウタロウはぽわぽわしている。人想いで、誰にでも優しくて、一緒にいる人の心を和ませている。
もしかすると、コウタロウは柴田が鎧を脱いだ姿なのかもしれない。華麗なる一族に生まれたことへの重圧とか、副社長としての責任とか。そういったものをすべて脱ぎ去った柴田の真の姿が、コウタロウなのではないだろうか。
今の自分が好きな人を選ぶか、過去の自分が好きだった人を選ぶか。コウタロウはどちらの道を選んだとしても、誰かを傷つけてしまうことになる。「必ず、戻ります。戻る理由があるから」と言っていたが、神戸に戻って本当の記憶が蘇ったらどうなってしまうのだろう。七苗は、幸せになれない未来が見えたから、手を離そうとしたのかもしれない。
「また後悔するの? 母さんが出て行ったとき、言えなかったんでしょ。行かないでって。素直に言いなよ。ダメでも、無駄でもいいから、伝えなよ」
九吾(齋藤潤)の言葉を受けて、コウタロウに会うために空港に駆けつけた七苗。しかし、もうそこに彼はいなった。2人は結ばれる運命ではなかったということなのか。
記憶が戻らないまま七苗のもとに帰ってきたとしても、コウタロウを愛している人たちが神戸にいるという事実は変わらない。この恋、どちらに転んでも苦しい結末になる気がしてしまう。