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それぞれの恋がはじまるもみな一度は破局へ

本郷奏多【『アイのない恋人たち』番組公式インスタグラムより】
本郷奏多アイのない恋人たち番組公式インスタグラムより

合コンのはずがいきなり2人きりでの食事となった雄馬と奈美。結婚に焦る雄馬に「ありのままの郷さんを受け入れてくれる人はきっといます!」と奈美は声をかける。この言葉に背中を押されるように、雄馬はマッチングアプリでの婚活に精を出すも空回り。奈美も奈美で親の勧める相手とお見合いをするが上手くいかない。自己肯定感が下がっていたところにお互いの価値を認め合えた雄馬と奈美の距離はぐんぐん縮まり、2人はまさに燃え上がらんばかりになっていく。

そして勢いのまま結婚を決意するが、奈美を医者と結婚させたい母親の猛反対にあい、奈美は雄馬の家へ転がり込む。さらに突っ走った2人は親の承諾を得ることなく結婚式まで企画。しかし勢い任せが災いし、揃って目の前の式から逃亡してしまう。真和たちを大いに巻き込んで、2人の関係は終焉を迎えた。

奈美の母親は、奈美を早く結婚させたがり「あなたは私が言う通りにしていればいい」「そんな仕事、いつ辞めたってかまわないでしょう」と平然と口にする。これもまた、夢と同様に一種の呪縛だろう。雄馬と別れてドレス姿のまま実家へと戻った奈美は、すべてのやる気をなくしたみたいに母親に言われるがままとなってしまう。

雄馬と奈美ほどではないが、多聞と栞もまた、関係を早まった。東京で自活し、やり甲斐を感じながら仕事をしていても、心のなかにはほんのちょっとの孤独が募る。それを埋めるようにはじめた“毎晩のメールのやりとり”で、2人の距離が徐々に接近。晴れて付き合いはじめるのだが、多聞のコンプレックスである童貞を「そんなことは気にしない」と栞が言ったことが別れるきっかけに。

人間の距離感というのは難しい。そして同時に、ある一面では価値観が合致した2人でも、結局は他人。栞にとっては「そんなこと」が、多聞にとっては耐え難いことだった。それぞれのカップリングのなかでも理性的に見えていた多聞と栞ですら、いとも簡単にこじれてしまう。自身の壁を打ち壊そうと、1人風俗へ行き、ベッドの上で涙を流す多聞の気持ちを思うといたたまれない。

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