主演・福士蒼汰の説得力
もちろん真和自身にも迷いはあり、脚本家になることを諦めて就職活動をしようとしたこともあった。でも、絵里加と愛の説得(とビンタ)もあり、彼は夢を追い続けることを選んだ。「40になっても50になっても」と語る真和からは、かっこよさよりは哀愁が漂うが、この人の真ん中にある芯のようなものが透けて見えて、きっと大丈夫だろうと思わされる。
自宅で執筆を開始する前にルーティンで逆立ちをしていることからも、真和はある程度身体を鍛えることを自身に課しているのだろう。だから、無精ひげで服装もいまいちピシッとはしていないものの、だらしなさを感じさせない。30代に突入したばかりの福士の若さと、キャリアを年齢を重ねて身についた色気、そして鍛えられた身体が、真和という肉体に説得力を与えている。
はじまって、1度は終わりを迎えたそれぞれの恋模様。だが、離れたあとに自分自身と向き合い、また新たな答えを見つけようとしている。雄馬と奈美は結婚を申し込んできたそれぞれの新たな婚活相手に、前の恋人が忘れられないことを打ち明ける。父の介護のため仕事を辞めて実家に帰ろうとしていた栞は、見送りに来た多聞に抱きつきそのまま一夜を共にする。真和は再び脚本を書かせてもらうべくプロデューサーに謝罪し、前述した通り、絵里加が抱えていた家族の問題を打破した。
夢も、恋も、家族も、アラサーになってなお、全然ままならない。もがいて、もがくことに疲れて沈んで、やっぱりこのままじゃダメだと自分を奮い立たせて。群像劇としてそれぞれの感情を隅々まで描く『アイのない恋人たち』が、終わりに向かって動きはじめている。
(文・あまのさき)
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