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避妊失敗後の男女の行動の差

『あの子の子ども』第1話 ©カンテレ
『あの子の子ども』第1話 ©カンテレ

 第1話では、2人がどこにでもいる普通の高校生カップルである描写からスタートする。高校1年生の夏、花火大会の日に、2人で決めて初めて身体を重ねたこと。母親に嘘をついてしまったことに対するきゅっとするような福の痛みや、これから経験する“初めて”は、「すべて宝と一緒がいい」と感じた切実さ。ひと夏のかけがえのない時間が、優しいタッチで紡がれていく。

 幼なじみということもあるからだろう。世界に2人しかいないかのように、平穏に互いを思い合う濃密な時間が流れているように感じた。特別なことなんて起こらなくていいから、こんな生活がずっと続けばいい。きっとそんなふうに思っていたことだろう。

 ところがある日、2人は避妊に失敗してしまう。そのときの宝の対応は好感が持てるものだった。妊娠してるわけないだろうとか、妊娠していたら困るなどと突き放すことは一切しない。安全性を含めてアフターピルについて調べて、次の日に行ける病院まで探していた。

 さらに、自分にとって大事なロードレースの地区予選を休んで、病院に付き添うと申し出るし、福の動揺を見て取れば、すぐに何が不安なのかを、手を取りながら尋ねるのだ。

 少々脱線するが、直近まで細田が出演していた平成初期を描いたドラマ『95』(テレ東系、2024)の世界と比べると、価値観のアップデートを感じた。きちんと思い合っている令和のカップルの安心感。そして、あの底抜けの“陽キャ”マルコを演じていた細田の演技の振り幅に、改めてすごさを実感する。

 アフターピルについて調べる宝に対し、福は避妊に失敗した場合の妊娠の可能性について調べていた。こういう場合の確率論は参考にするべきではないと思うのだが、きっと不安を打ち消したくてとった行動だったのだろうと考えると、気持ちはわからなくもない。具体的な対策を考える宝と、心のよりどころを求めた福。このあたりの男女差みたいなものがリアルだった。

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