緑川が”裏切り者”
次の公判で、明墨側は、白木が話したとおり、糸井一家の死因がタリウムではなく、「ボツリヌストキシン」であることを示し、伊達原が科捜研に指示し、調書を改ざんさせたと主張した。
対する伊達原は、事件当時の捜査では再検証が行われ、結果、2つの薬物が両方検出されたと主張。薬物検査結果の証拠を提示し、明墨側が示した書類は偽造されたものだと、反証する。
しかし、そこに落とし穴があった。明墨は語る。「ならば何故、そんな偽の書類を必死になって探していたのか」。明墨側は、資料室内に設置されたカメラの映像を証拠として提出する。そこで伊達原はこの裁判において初めて、怯んだ表情を見せる。
映像が再生されると、そこには伊達原が資料室の棚を漁り、証拠となる資料を持ち出す姿がありありと映し出された。明墨が用意していたフェイクとも知らず、伊達原は自ら証拠を隠滅したのである。伊達原はそれまでの勢いが消え、一気に形勢が逆転する。どちらが原告か被告かが分からなくなってくるやり取りだ。
警察内部に罠をしかけるのは、明墨たちでは不可能だ。つまり、誰か内部に明墨と手を組んだ“裏切り者”がいることを示唆する。
その“裏切り者”とは、なんと緑川(木村佳乃)だった。公判直前、緑川は白木と共に明墨法律事務所を訪れていた。
緑川は、明墨と桃瀬の司法修習生同期だった。桃瀬は、明墨と緑川に「糸井一家殺人事件」の冤罪を訴えたが、当時は2人とも信じることが出来なかった。
桃瀬の死に瀕してその想いを継いだ2人は、事件を追い続け、長い間、裏で繋がっていたのだ。緑川は内から、明墨は 外から、志水の冤罪を晴らし、伊達原を追い落とすことを目指していた。
そして、伊達原を法廷の場に引きずり込むため、明墨は白木をわざと裏切らせ自ら逮捕される作戦に打って出て、それを見事に成功させた。