“運”が無いものは救わない天城
ソヒョンの命を諦めたくない世良は、東城大の協力を得て、なんとか救う方法を模索する。ところがいい方法は見つからないうえ、唯一見つけ出した似た症例も天城が執刀したものだった。
世良は天城に謝罪し、再度オペを依頼する。天城は「オペは芸術だ」と言い、自分がこれからする手術を見ていくよう誘った。
世良が海の見える開放的なオペ室に入ると、寝かされていたのはソヒョン本人。結局、天城にもう1度賭けを申し込み、手術を受けられることになったという。心臓以外は触らない天城は、開胸が完了した患者のもとへ歩を進め、鮮やかな手技を見せる。背後に流れるクラシックの音楽と相まって、実に優雅だ。天城の言う通り、それはまるで芸術だった。
渡海は近寄りがたい空気を纏った、陰の印象が強い医者だった。ゆえに日々手術が行われていたオペ室は暗く、手術シーンも速さに重点が置かれていた。そして、自身の名声にはまったく興味を示さず、金を払えば命を救ってくれた。金のないところから無理矢理奪い取るようなこともせず、その金さえ、最後には寄付をしていたことが明らかになった。口と態度は悪いけれど、悪人ではなかった。
対して天城は、一見すると人当たりはいい。暴言を吐いたり声を荒げたりすることはないが、その代わりに金はあっても運をもっていなければ手術はしない。この点では渡海よりもたちが悪い。さらに、肝心の手術も、それから彼の暮らしぶりも、ずいぶんと派手そうな印象を受ける。ソヒョンから譲り受けた店の権利のうち、赤字だからという理由で1号店のみ返却したのは、せめてもの天城の優しさだと信じたいが…。