彩が持つ「力」の意味
彩は車椅子生活となった姉を励まし続けたが、真紀にはそれを前向きにとらえられるほどの余裕はなかった。災害によって身体的な影響を受けたこと、そして、仲の良かった姉妹の間に亀裂が入ったことも、災害によってつくられた目に見えない傷だ。
ところで、晴原が言った「力」とはなんだろう。具体的なアドバイスや対策を打てる知識だろうか。もちろん、考えなしに前向きな言葉を伝えることだけが励ましだとは思わない。でも、もしも知識が力なら、それを持っていない者たちは、目の前で苦しむ人たちを静観することしかできなくなってしまう。そんなのは悲しすぎる。
それに対するアンサーかのように、もやもやを抱える彩に「お節介も100回続けば愛情になる」と言葉をかける晴原。物事は表裏一体であるといった張本人のこの言葉は、彩の心に光を射したはずだ。続けることで、きっといつか愛情は届く。
いや、その場を取り繕った励ましではなく、愛情によるお節介ならば100回でも1000回でも続けられるというほうが正しいかもしれない。裏側にたどり着けるのは、正しいと思う道をいかに貫けるかだ。