軍歌が苦手だった服部良一
ちなみに、スズ子が羽鳥家を訪ね、晩御飯を一緒に食べるシーンで、良一の妻・麻里(市川実和子)がこう話すシーンがある。
「軍歌みたいな流行歌を作ってお金を稼いでほしいのに、(善一は)〝そんな歌作るために東京に来たんじゃない〟って」
善一はこう返す。
「それは違います、戦時歌謡が作れないだけです。才能がないんです」。
服部良一は実際、太平洋戦争開始から終戦まで、何曲か軍歌を作っている。ところがほとんどヒットしなかった。ドラマのセリフの通り、ジャズ畑である彼の音楽は、軍歌に向いていなかったようだ。行進曲の得意な古関裕而や日本的な曲調の古賀政男が、軍歌や戦時歌謡を多く作っている。
いつまでも音楽を自由に楽しみたい。「バドジズ」したい。でも、国が許さない。そんなむちゃくちゃな時代があったことを、これから『ブギウギ』で観ていくことになりそうだ。あれだけ「怖い怖い!」と震えた『ラッパと娘』の、羽鳥善一の鬼の笑顔レッスンも、ある意味平和だった証拠なのだ。
今後戦火が激しくなるのはわかってはいるけれど、それでも一刻も早く、スズ子、その家族や仲間たちにかかる不穏な暗がりが去ってほしいと思う。
(文・田中稲)
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