りつ子のモデル・淡谷のり子の実体験
1月の「戦争とうた」週では、りつ子の特攻隊慰問の様子がしっかりと描かれていた。これは、モデルとなった淡谷のり子さんの実体験がベースとなっている。特攻隊の慰問に行った際、歌っている最中に命令が下され、彼女に敬礼しながら笑顔で去っていく少年たちを前に、泣けて歌えなかったという。
また、軍歌を嫌い、慰問先でも歌わなかったそうで、「別れのブルース」などを歌い、兵隊たちには喜ばれたという。ときには英米人の捕虜に向かって英語のラブソングなどを歌い、何度も軍部ににらまれたというから、まさに「じょっぱり」(津軽弁で意地っ張り、頑固者の意)!
東洋音楽学校(現・東京音楽大学)の声楽家を首席で卒業した彼女にとって、笠置シヅ子自己流の歌唱法は、受け入れがたいものがあったようで、「どうにも聞いていられないときがある」「歌を勉強したものにとっては恐ろしささえ感じます」など手厳しい見方を変えなかった。
しかし晩年までお互いの家を行き来するなど、交流は続いたというから、本当に不思議な関係だ。笠置シヅ子とは一本筋が通ったところがお互い理解できたのかもしれない。
ぜひ、ドラマでも、「あなたの歌い方は理解できないわ……」「そりゃすんまへんなあ」などと言い合い、お茶をすすっている晩年の二人が見たい。