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激動の人生を送った李香蘭

草彅剛、連続テレビ小説『ブギウギ』©NHK
草彅剛連続テレビ小説ブギウギ©NHK

スズ子とりつ子の師匠、羽鳥善一の上海渡航の様子も、「戦争とうた」週のメインエピソードの一つ。服部良一は1944年に、陸軍報道班員として招集されている。当時の上海は、日本ほどエンタメの規制が厳しくなく、さらに食料などの物資が豊かにあったため、毎日宴会状態だったという。ドラマでも、日本のシーンとのギャップがすごい。

しかし上海で終戦を迎えた服部良一が帰国できたのは、1945年の12月。戦争から4カ月も経ってからだ。第一回引き上げ船で日本に戻り、そのとき彼が東京・有楽町で、被災を免れ、再び公演をはじめていた日劇を見て、大変励まされたという。その公演には、ちょうど笠置シヅ子も出演していたのも、また運命を感じる。

2024年1月4日の回で、一度だけ歌姫・李香蘭が登場したが、彼女もまた、その人生が何度もドラマ化されるほど、波乱万丈である。

日本人だが、中国の満州で生まれ、その美貌から「李香蘭」として日本と満州の親善をアピールする国策映画に出演。その後、中国人女優として活動することになるのである。

李香蘭を演じる昆夏美が、澄み切った歌声を響かせた「夜来香」は彼女の代表曲。ほかに、1940年、渡辺はま子・霧島昇が歌唱して大ヒットした「蘇州夜曲」も、李香蘭の歌唱を前提に服部良一が作曲したものだ。

「ブギウギ」でも第9週「カカシみたいなワテ」で、歌唱規制に悩むスズ子が、動かずとも歌える歌として、「蘇州夜曲」を歌わせてほしいと羽鳥善一(草なぎ剛)に頼み、羽鳥に「君は心から『蘇州夜曲』を歌いたいわけじゃないだろう」と断られるシーンがあり、X(旧ツイッター)では「蘇州夜曲」がトレンド入り。今なお多くの人の心にある名曲であることがわかる。

日本の敗戦後、李香蘭は漢奸(売国奴・祖国反逆者)のかどで中華民国政府から軍事裁判にかけられ、銃殺刑になりかけている。ぎりぎりのところで日本国籍であるということが証明され、死刑を逃れ、日本に帰国した。その後も山口淑子の名で女優として活躍し、ハリウッド映画にも出演するなど、まさに激動の人生を送っている。

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