「ヘイヘイブギー」が歌われた
リアル第7回紅白歌合戦の出場歌手
その誘拐犯に留守をあずけ出場した、丸の内テレビ「男女歌合戦」のステージは最高だった。「ヘイヘイブギー」で大トリをつとめ、野心的に「ラッパと娘」を歌った水城アユミ(吉柳咲良)との格の違いを見せつけたシーンは爽快だ。
「負けません」と野心メラメラなアユミ。歌い終わった後の猛獣のような視線からは「私が次の女王よ。ロートルは引っ込んでなさい!」くらいの勢いを感じた。
思えば、小夜ちゃん(富田望生)が登場したとき、「ガラスの仮面」に登場する、北島マヤのマネをして役を乗っ取ろうとするキャラ、乙部のりえを彷彿とさせると話題となった。しかしアユミのあのすわった眼にこそ、乙部のりえを感じたのは私だけだろうか。
水城アユミのモデルは、笠置シヅ子のカバー曲をことあるごとに歌い、時にトラブルにもなった、若き日の美空ひばりとされているが、実際の紅白歌合戦では、笠置シヅ子が大トリを務めた年にひばりは出場していない。リアル第7回紅白歌合戦を、ちょっと振り返ってみよう。
会場は東京宝塚劇場、出場組数は紅24、白25。司会は紅組=宮田輝アナウンサー、白組=高橋圭三アナウンサー。
トップバッターは荒井恵子「南の花嫁さん」と、岡本敦郎「自転車旅行」。主な楽曲は、藤山一郎「あゝ牧場は緑」、渡辺はま子「桑港のチャイナタウン」、春日八郎「別れの一本杉」、ディック・ミネ「私の青空」。笠置シヅ子の「ヘイヘイブギー」の対決相手は、灰田勝彦「白銀の山小舎で」。
さすが紅白黄金期の始まりと言われた回! 今も歌い継がれる名曲がズラリである。
ドラマで、はじめ君が大ファンだと言っていた「三橋みつお」のモデルは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いで人気だった三橋美智也だろう。彼は「哀愁列車」を歌っている。
もちろん、茨田りつ子(菊地凛子)のモデルとなった淡谷のり子も出場し「ルムバ・タムバ」を歌唱。
りつ子さんは、スズ子の心の友だった。厳しい言葉で現実を見せ、正論を言い、迷ったときも答えを自分で出せるようにスズ子を誘導してくれた。そして、最後のステージでは、涙を流してくれていた。2人の友情がていねいに描かれたことは、間違いなくこのドラマを熱くした一つの要因だろう。
囁くような声といい不機嫌がデフォルトの表情といい、演じた菊地凛子さんが、本当に素晴らしかった。茨田りつ子さんのスピンオフドラマを観たい!