侑里とテオが魅せる新たなカップル観
絵本の結末を知ってしまった侑里は、テオを過酷な運命に巻き込まないように、別れを告げることに。
振り返れば、テオはこれまで“今”を大切にしてくれていた。侑里と一緒にいる“今”を全力で楽しんで、「タイムマシーンに乗るならどこに行きたい?」と聞かれたときも、「今が、いいです。今がいちばん好きです」と答えていた。
テオは、ハナの恋人と同じ運命が訪れることを覚悟していたのかもしれない。「この恋のせいで、自分が死ぬことになっても……」と思えるほど、侑里を愛していたのだろう。
ただ、テオは今までも侑里の意思を尊重してきてくれていた。告白をされそうになったら、途中で止めて「僕から言わせてください」と言いそうなキャラなのに、「お米は好きですか?」「カレーは好きですか?」「チャーハンは好きですか?」「オムライスは好きですか?」「じゃあ、僕は?」と侑里が想いを伝えやすいようにアシストをしたこともあった。
平成のドラマは、男性側がヒロインをグイグイ引っ張っていくことが多かったが、テオの振る舞いは令和っぽい。「大事なことは男から言わなきゃ」みたいな思い込みがなく、お互いに支え合っていく。
もちろん、男性が女性に甘えてもいいし、女性よりも男性の方が料理が上手くたっていい。「女の子なのに、料理苦手なの?」なんてことも言わない。侑里とテオは、新たなカップル観を提示していく存在だなぁと思っていた。
そんなテオだから、侑里の決断を尊重しないわけにはいかない。「テオくんのことが、大好きです。だから私たち、別れよう」と言われて、「関係ありません。侑里さんのことが、本当に大好きです」と伝えた。それでも、侑里はテオの手を離し、部屋を出ていこうとした。これ以上は、引き止めることができない。
ここで、「行かないで」ではなく、「가지 마(カジマ)」と言ったのは、きっとわざと。簡単な日本語ならペラペラと話せるテオが、「行かないで」という単語を知らないわけがない。行ってほしくない。でも、彼女の気持ちは大切にしてあげたい。テオはそんな葛藤と戦いながら、「가지 마(カジマ)」とつぶやいたのだろう。