『下剋上球児』は魂に訴える快作
本作の野球部員には、新進気鋭の若手俳優が多く出演している。根室知廣を演じた兵頭功海は『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(テレビ朝日系、2019)に出演。
また、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(同局、2018)の主役で、主将の椿谷役の伊藤あさひ、『仮面ライダージオウ』(同局、2019)を演じた野原役の奥野壮、日沖壮磨の兄・誠を演じたのは菅田将暉の弟・菅生新樹だ。さらに、父は中山秀征、元宝塚の白城あやかを母に持つ中山翔貴が阪大輔役として起用されている。本作の活躍ぶりを見て、それぞれが今後さらなる飛躍を遂げるだろう役者ばかりだ。
タイトルの「下剋上」という言葉は、越山野球部に対して掛けられた言葉にとどまらず、偽教師事件から、周囲のサポートを受け野球部に復帰し、結果的に越山ナインを甲子園に連れて行くことになる南雲や、野球部員を演じたキャスト一人ひとりにも掛けられた言葉であると感じる。
原案本も白山高校野球部が強化される過程を丹念に追いながら、面白エピソードも満載だったが、ドラマ化にあたって、逆境に立ち向かう南雲を中心とした物語が肉付けされ、爽快なストーリーとなった。
「青春」とはティーンエージャーだけに向けられる言葉ではない。南雲や山住も間違いなく、青春を謳歌しているようにも感じられた。そんな“大人の青春物語”を描き出したことも、本作が視聴者から受け入れられた重要な要素だったといえよう。
魂に訴えるストーリーを提示し、視聴者の心をつかんだ本作。まさに「日曜劇場」らしい快作だった。
(文・寺島武志)
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