死は悲しくも救済にもなり得る
震災に巻き込まれたことは予想できるが、慎一はいまだに見つかっておらず、生きているのか死んでいるのかさえわからない。以来、真は前に進むことができていないと、桜に打ち明けた。
だが、意外なところから慎一の消息をつかむ。バイク事故で亡くなった葉山聡(濱田龍臣)のパソコンから震災直後の動画が見つかり、慎一の姿があったのだ。そこには最後まで逃げ遅れた被災者を津波から避難させる慎一がおり、真は大粒の涙を流すのだった。
もちろん、誰かの帰りを待っている人の感情を完璧に把握することは難しいし、ましてや婚約者が亡くなっていることが決定的になったというシーンはあまりに残酷に映る。
だが、かつて「誰の力にもなれない。誰も幸せにできない」と漏らしていた最愛の人が最後まで生きようとし、さらに当時まだ小学生で動けずに泣いていた葉山を「俺の一番大切なお守りだ。後でちゃんと返してもらうからな。それまで頑張れ!」と励まして救っていたという事実は真にとってあまりに大きな意味を持つ。
最後の瞬間まで、慎一は自分が愛したような素敵な人間でいてくれた。互いにとって決して望んでいた最期ではないが、13年間待っていた真にとっては救いになったのではないだろうか。