安易な結末には終着しない『GO HOME』
一度は壊れた家族関係が第三者との出会いをきっかけとし、修復へと動き出す。ドラマではよく用いられる手法だが、『GO HOME』は安易な結末に終着しなかった。
桜は葉月を家に呼んで夕食をともにする中、母が変わっていないことに愕然する。桜に実家に帰ってきてほしいという願いはあくまでも父の機嫌を取る方法のひとつで、自分のことなどこれっぽっちも思いやってくれていない。それは「家族と一緒に暮らしたいのは当たり前。あなたも自分の家庭を持ったら…」という決めつけに近いような言葉からも読み取ることができた。
桜が過去に妹の口をふさごうとしたという決意の告白も母の耳には届かない。葉月は「いい加減にしなさい!お母さんを困らせて、何が面白いの!」と逆上してしまう。まるでぷつっと音が聞こえるように表情をなくした桜は「もうこれ以上、嫌いになりたくないから…お願い、帰って」と告げるのだった。
紀子の母である桐子(阿南敦子)が死ぬ間際まで、娘との関係をもう一度やり直そうとしていたことが様々な証拠で強調される一方、直接顔を見て話すことができるのに、桜と葉月は「やっぱりだめだった」のだ。「家族だから一緒に」ではなく、「家族でもいろいろ」という結論に行き着いたことで、世の中に数多ある家族の形をすべて肯定してくれた気がした。