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道兼に裏切られた花山天皇

『光る君へ』第10話より ©NHK
光る君へ第10話より ©NHK

共に出家するはずだった道兼の「お側にお仕えできて、楽しゅうございました」という言葉とその冷ややかな視線を受け、謀られたと気づいた時のうろたえた表情に心が痛んだ。わずか10代にして大切な人を失い、その悲しみに誰も理解を示してくれず、唯一信じられると思った人から裏切られてしまった花山天皇。あまりにも不憫だ。

だが、ある意味、道兼も不憫である。兼家は計画が成功したら道隆(井浦新)に利があり、失敗しても道長だけは生き残れる算段を立てていた。道隆は長男だからわかるが、なぜ三男の道長が?おそらく兼家は、兄弟の中で最も冷静に自分を見ている道長に一目置いているのだろう。

道隆と道兼は父である自分を尊敬してくれているが、自分以上にはなれない。その点、道長は自分をも超える可能性があると兼家は、一族の未来を託している節がある。

かたや、道兼は兼家に都合の良い捨て駒としか思われていない。そうとも知らず、唯一兼家の仮病を知っていた道兼は自分が認められたと勘違いしている。花山天皇のことは許しがたいが、ここまでくるともはや可哀想でならない。

ちなみに歴史物語『大鏡』では、作中でも描かれたように秘密裏に出家するため、内裏を抜け出した花山天皇が月明かりの眩しさを気にする場面が出てくる。

月明かりに照らされてやましさを感じるところもそうだが、義懐(高橋光臣)にやっぱり出家のことを知らせておいた方がいいのでは…と気にしたり、忯子(井上咲楽)からの手紙を取りに戻ろうとしたり。そういう繊細な感性を持っている花山天皇は、やっぱり憎めない。

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