三兄弟それぞれの家庭から見える人間の器
それぞれの状況が描かれた「光る君へ」第13回。特に注目したいのが、道隆、道兼(玉置玲央)、道長の三兄弟だ。3人はいずれも妻を迎えたが、家庭のあり方が随分と違っている。
道隆は国司の横暴に苦しむ民からの訴状を「強く申せば通ると思えば、民はいちいち文句を言うようになる」と却下するなど、無慈悲な人柄が透けて見えるが、意外にも家庭は円満だ。
印象的だったのは、道隆が「父にもしものことがあったら私が摂政となるので、お前も心づもりをしておけ」と念を押した時の妻・貴子(板谷由夏)の言葉。「心づもりはとうの昔にできております」と一切動じることのない貴子に、道隆に対する信頼の強さが伺えた。
息子の伊周(三浦翔平)も父である道隆のことを尊敬しているように見えるし、後述するが、娘の定子も素直な性格に育っている。職場でも家庭でも上手く振舞っているのが、計算高い道隆らしいというべきか。
一方、道兼は上手くやっているつもりだが、実際は異なる。定子の入内に焦り、妻・繁子(山田キヌヲ)との間に生まれた娘・尊子を同じように一条天皇に入内させようとする道兼。結局のところ、道兼にとって娘は出世の道具でしかないのが伝わってくる。
それはもしかしたら道隆も同じなのかもしれないが、彼の場合はうわべを飾るのが上手だ。道兼も花山天皇(本郷奏多)を騙せるだけの演技力はあるが、それは目的があったからであり、妻や娘に対して気を遣っても何の成果も得られないと思っているのだろう。
出世するにしたって家庭円満の方が何かといいはずなのに、その辺りの爪の甘さがこれまた道兼らしい。そんなんだから、利益のために己に近づいてくる公任(町田啓太)の「摂政様が一番頼りにしているのは道兼様」という言葉にコロッとほだされてしまう。チョロい、チョロすぎるぞ、道兼。まぁその分、道隆よりも人間味があってまだ愛せるのだけれど。