呪縛から解き放たれた一条天皇
道隆の間違いは、一条天皇を延々と意のままに操れると思い込んでいたところにもあった。一条天皇だって、いつまでも子供じゃない。意思のある人間であり、成長すれば色んなことが見えてくる。もともと心優しい性格の一条天皇は道隆が疫病の蔓延に関する策を何も講じなかったことで不信感を抱いたのだろう。
そんな中で、大臣たちの批判が自分にも及んでいることを知った。伊周に内覧の宣旨をして欲しいと道隆に頼まれ、「下がれ」と気丈に告げる姿が印象深い道隆が死に、一条天皇はようやくその呪縛から解き放たれた。
一条天皇とはまた別の変化を見せるのが、定子だ。伊周に帝から内覧の許しを得るように提言したのは彼女だった。20年前に内覧が置かれた先例まで自ら調べ上げた定子。
だが、内覧は関白に準ずる職であり、伊周も恐れ多いといった表情を見せるが、定子は「内覧になってしまえば、関白になったも同然」「20年ぶりでもなんでも、やってしまえばよい」と後押しする。
もし順当に道兼が関白の職を引き継ぐことになったら、内裏の外へ追いやられた詮子(吉田羊)が再び力を取り戻すからだろう。そうなったら母親の前で萎縮しがちな一条天皇がますます逆らえなくなってしまうかもしれない。
それは絶対に避けたい定子。愛する帝のためなら何でもする。これまで無垢で天真爛漫だった定子が見せる策士の顔に驚いた。
だが、よく考えれば彼女は道隆の娘。そういう一面があってもおかしくはない。一方で、詮子も負けてはおらず、道兼を次の関白に据えるため、虎視眈々と準備を整えている。
次週以降そんな定子と詮子の嫁姑バトルが激化しそうだ。
(文・苫とり子)
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