道兼の死後、幕を開ける第2章
「光る君へ」第17話は、第1章の終幕とも言える回だった。第1章はまひろの母・ちはや(国仲涼子)の命を奪った道兼の死をもって幕を閉じる。そして、まひろとともに、「誰もが理不尽に命を奪われることのない世の中を」と願う道長が政権の頂きに立ち、第2章が始まるのだ。
その前に、35歳という若さでこの世を去った道兼の生涯を振り返っていきたい。右大臣・兼家と時姫(三石琴乃)の次男として生まれた道兼。父に冷遇されていたことも相まって、若い頃は粗暴で行き場のない苛立ちを道長に向けていた。庶民を見下し、ちはやの命も怒りに任せていとも簡単に奪ってしまう。 兼家に命令されれば、帝でさえも欺いた。
そんな道兼を変えたのは、道長だ。道長にとって、道兼は愛する人を苦しめた張本人であり、自分もまた被害を受けているのだから恨んでもおかしくはない。だが、その道兼はいわば兼家が生み出した怪物。父に認められたい一心で罪を犯してきた道兼を、道長は見捨てず、兼家の死後もその呪縛に囚われている彼を解き放った。
父親から愛されず、妻と子供にも見捨てられ、誰からも慕われることがなかった道兼。だけど、道長だけは愛を注ぎ続けてくれた。その愛に、道兼が気づいてくれて本当に良かったと思う。それからは人が変わったように穏やかとなり、疫病患者のいる悲田院にも自ら赴いた。
結果的にそのことが道兼の死を招いてしまったという事実は残念でならない。誰にもうつさないように部屋にこもり、死を悟ったように読経を始める道兼。だが、ふと自分が浄土に行こうとしていることに気づき、「こんな悪人が」と笑いが込み上げてくる。父親の呪縛から解き放たれても、自分の罪からは逃れることができない。当然といえば当然だ。だけど、彼が苦しいのはその罪としっかり向き合ったからこそ。
そんな道兼をどうしても憎むことができず、見ているこちらまで辛くなってしまったが、最後に道長が彼を抱きしめてくれて少し救われた。兼家が一人で最期を迎えた時も、その遺体を固く抱きしめた道長。やっぱり彼は愛の人だ。
直秀(毎熊克哉)を埋葬した時もそうだが、死が穢れとされたこの時代に躊躇いもなく彼らに触れ、その無念を少しでも晴らそうとする。まひろもそうだ。道兼を恨む気持ちはあれど、そこに目をつむり、彼が褒めてくれた琵琶の音色と共にあの世へと送り出した。