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号泣しながら懇願する強き母・詮子

『光る君へ』第18話より ©NHK
光る君へ第18話より ©NHK

そして最後に、主人公の因縁の相手である道兼がこれほどまでに視聴者に愛されたのは、玉置玲央が演じたからに他ならない。道兼がしてきたことは決して許されることではないが、その根底にはいつも孤独や焦燥感があり、玉置はそれをすくい取って私たちに見せてくれた。

ユーモラスを感じる演技も印象的で、反抗期の少年みたいな独特の可愛らしさもあった道兼。個人的にはここまでで一番好きな登場人物だった。奥深い人間像を届けてくれた玉置に感謝を述べたい。

一方で、ヒール感を増してきているのが伊周だ。一条天皇が道長に内覧宣旨を下した後、伊周は真っ先に定子(高畑充希)の元へ向かい、罵声を浴びせる。「皇子を産め。早く皇子を。早く皇子を産め!」と狂ったように叫ぶ伊周はまるで、道隆が乗り移ったようだった。あんなに仲の良い兄妹だったのに……。父にも兄にも出世の道具としてしか見られていないことを悟った定子。顔色を一切かえずとも彼女の失望が伝わってくる高畑充希の演技が素晴らしかった。

もう一つ印象に残ったのは、詮子が一条天皇に「次の関白は道長に」と説得する場面。詮子の夫である円融天皇(坂東巳之助)は兼家の差し金で毒を盛られ、退位を余儀なくされた。その結果、夫婦仲は壊れ、円融天皇からひどく責められたこともある詮子。それでも夫を愛し、自分たちの間に生まれた一条天皇を立派に育ててきた強い女性だ。やりすぎなところもあるが、彼女もまた帝よりも関白が権力を握り、横暴を極める内裏のあり方を変えようと戦っている。

そんな詮子の「母は自分のことなぞ、どうでもよいのです! ただ一つ願うは、お上が関白に操られることなく己の信じた政ができるようにと。ただひたすら、それを願っているのです」という必死の訴えが胸に迫った。まごうことなき実力派の俳優陣が集結した「光る君へ」。“第2章”も白熱する演技合戦から目が離せない。

(文・苫とり子)

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