道長の政治的手腕が発揮される
『光る君へ』第19話より ©NHK
「光る君へ」第2章の始まりとも言える第19回。目を見張るのは、公卿のトップの座についた道長の政治的手腕だ。特に見事だったのが、反発する伊周と隆家の懐柔である。
源明子(瀧内公美)の兄・俊賢(本田大輔)を参議に任じた道長。既にご存知の通り、彼らの父である源高明は道長の父・兼家(段田安則)によって失脚させられた。そのため、自分は源再興のために道長に近づいているだけで、決して忠義立てしているわけではないと伊周と隆家に擦り寄る俊賢。
さらには、「帝は右大臣に対抗する力がなければ内裏も陣定も偏りなく働かぬとのお考え」と2人をおだて、参内を促す。最初は早くも裏切りかと思ったが、全ては計算のうち。そもそも道長が俊賢を参議に抜擢したのは、彼がいざとなったら源高明の息子であるという誇りを捨てることができる彼の処世術を評価したからだ。
道長は人の本質を見抜き、上手く使う力に長けている。そのトップとしての器を兼家は早くから見抜いていたのではないだろうか。「自分さえ良ければいい」という考えには賛同しかねるが、やはり偉大なリーダーであったことは認めざるを得ない。
だが、道長はそんな父と別の道を歩む。彼が為すのは、「家のための政」ではなく「民のための政」。租税の免除に苦言を呈した伊周にも「いまだ疫病に苦しむ民を救うは、上に立つ者の使命と存ずる」と毅然とした態度で言い放った。
あの気難しい性格の実資(秋山竜次)でさえも、これには感心した様子。実資の反応は良いリーダーかどうかを測る、ある種のバロメーターだ。
優秀なリーダーには優秀な部下たちがついてくる。秋の徐目では俊賢が参議になったほか、実資が権中納言に、行成(渡辺大知)が蔵人頭となった。さらには為時を従五位下に推挙した道長。忖度はせず、身分も立場も関係なく本当に優秀な人を登用する。今は会えずとも、道長とまひろは同じ未来を向いている。