運命的な再会を果たしたまひろと道長
およそ6年ぶりに再会を果たし、互いに素性を隠しながらも打ち解け合うまひろと道長。2人のやりとりは、背景となっている陰謀渦巻く貴族社会からは自由で、ある種の清涼剤となっている。男たちはこぞって権力争いに身を投じ、女たちはその道具として犠牲を強いられるこの時代。権力にはさほど興味ない道長と、代筆仕事に自らの生きがいを見出すまひろは互いの男女観を大きく覆す。なるほど、大石が2人の関係を“ソウルメイト”と称する理由が少しだけわかったような気がした。
しかし、そんな2人は再び会えなくなってしまう。まひろの代筆仕事が為時にバレたのだ。「学者である父の顔に泥を塗るようなことは断じて許さぬ!」と怒りを露わにする為時にまひろは「代筆仕事は私が私でいられる場所」と主張するが、認められない。
幼い頃から為時の影響により知識欲が旺盛で、弟の太郎(高杉真宙)よりも勉学に長けているまひろ。そんな彼女を為時も昔は可愛がっていた。しかし、それとこれとは別問題で、下級とはいえ貴族の娘であるまひろがみだりに外をうろつくことを為時は許すわけにはいかない。その日からまひろには監視がつくようになる。
一方、この社会の犠牲となるのは何もまひろ、女性だけではない。まひろの因縁の相手である道兼も、ある種の犠牲者だ。あの日、道兼が人を殺めたことを兼家は知っており、彼にさらなる汚れ役を強いる。それは、政治のトップを目指す兼家にとって障害となる円融天皇(坂東巳之助)に毒を盛れというものだった。
もちろん、道兼に選択肢などない。家に縛られる女性と、地位や権力に縛られる男性。不自由で息苦しいのはどちらも一緒であり、双方の問題は複雑に絡み合っている。
歴史に詳しくない者にとっては、ただでさえ取っつきづらい平安時代。しかし、『光る君へ』は大石が得意とするラブストーリーの手法と、現代に即してみることのできるジェンダー論的観点も盛り込まれ、かなり観やすい作品となっている。
ロバート・秋山竜次のクリエイターズ・ファイルに出てくるような天皇の側近・藤原実資や、「本郷奏多にぴったりの役!」と話題になっている東宮・師貞親王など、一癖も二癖もある気になる登場人物も満載。これからもっと激しさを増していくであろう物語が楽しみだ。
(文・苫とり子)
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