伊周と隆家、処分への態度で明らかになった器の差
中関白家の凋落が決定打となった「光る君へ」第20回。絶望の淵に立たされた伊周と隆家の態度が、対比的に描かれた。
一条第から逃げ帰った伊周はガタガタと震えており、思いつめた表情をしている。「行かねばよかった」と後悔ばかりを口にする伊周。対して、矢を射った張本人である隆家はあっけらかんとしているではないか。パニックのあまり、癇癪を起こす兄を呆れた表情で見つめていた。
だが、それはまだ見方が甘かったからだろう。謹慎を申し付けられ、事の重大さに気づいた隆家はまさかというような表情をしていた。けれど、無駄な抵抗もしない。遠流に処された時も、最後まで抵抗していた伊周に対し、隆家は処分を甘んじて受け入れる。
為す術もなく呆然と涙を流す貴子(板谷由夏)に「お健やかに」と笑顔を見せた隆家からは意外な器の大きさを感じた。彼は自由奔放だが、自分が起こした事の責任はきちんと取る男なのだろう。なんだか、ここで退場となってしまうには惜しいくらい魅力的な人物となった。こういう憎めないキャラを演じさせたら竜星涼の右に出るものはいない。
かたや、伊周はどうしようもない。あれだけ反発していた道長に頼る道しか残されていない伊周はプライドも捨て、「なんとか内裏に戻れますよう右大臣様の格別のお力を受け賜わりたく」と乞い願う。
それでも願いが聞き入れられないとなると、「どこにも行かぬ」と屋敷に立てこもる始末。将来有望な貴公子として持て囃されていた頃の面影はもはやどこにもなく、駄々っ子のようになってしまった。ここまで落差を出せるのは、容姿端麗で、かつコメディもお手の物な三浦翔平だからだろう。
最後まで誇りを失わなかった定子にも注目が集まった今回。一条天皇、そして彼女を敬愛するききょう(ファーストサマーウイカ)との今後の関係も気になるところだ。