詮子の呪詛騒ぎは自作自演?
伊周と隆家が遠流に処されたのは、一条天皇の身内である詮子を呪詛したからだが、これが少し疑わしい。「呪詛はしておりませぬ」と道長に訴える伊周は嘘をついているようには見えなかった。と、すると彼らは誰かにはめられたのだろう。
呪詛が発覚したのは、詮子が病に伏せる中、悪い気を察知した倫子(黒木華)が家人たちに屋敷をくまなく調べさせたところ、無数の呪符が見つかったことによる。詮子は伊周たちの仕業と決めつけ、道長も伊周の息のかかった者が屋敷にいるとみて追及しようとした。
だが、「この一件は私にお預けくださいませ」と道長をたしなめる倫子。最初こそ、息巻いていた道長だが、彼女の意味深な笑顔から何かを悟ったようにこのことを一任する。おそらくだが、呪詛は詮子の自作自演であり、倫子はそれに気づいたのではないだろうか。
そして、それを内々で収めようとした……と思ったのだが、後日、検非違使庁の別当(最高責任者)である実資(秋山竜次)が、伊周が祖父である高階成忠に命じて道長と詮子を呪詛したことがわかったと一条天皇に報告する。倫子に帝にも知らせないと約束した道長は驚いたような表情を浮かべていた。
果たして、誰が嘘をついているのか。考えられる可能性としては4つ。
1.伊周が嘘をついており、本当に道長と詮子を呪詛した
2.詮子が伊周や隆家をよく思っていない実資と結託し、自作自演の上で嘘の報告をさせた(あるいは嘘の証拠をつかませた)
3.詮子が倫子と結託し、自作自演の上で呪詛の情報を広めさせ、かつ嘘の証拠を実資につかませた
4.詮子は倫子の口の軽さを利用し、伊周に呪詛されたことを広めようとしたが、自作自演に気づいた倫子が逆に道長の立場が悪くなることを懸念し、対立関係にある伊周をより確実な方法で貶めた
他の可能性もあるとは思うが、いずれにしても光るのは倫子の“ファーストレディー”としての才覚。右大臣として忙しく働く夫の手を煩わせないように一人で問題解決に奔走する、勘の鋭さ、洞察力、細やかな気配り……。
ほんわかしているように見えて、侮れない。時代が時代なら、彼女こそ優秀なリーダーとなっていたのではないだろうか。父の任地を国替えさせたまひろもそうだが、成功者の影に内助の功あり。
(文・苫とり子)
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