映像で語られる『枕草子』
ききょうの“推し活”
「たった一人の悲しき中宮のために『枕草子』は書き始められた」
「春はあけぼの」から始まる有名な清少納言の随筆『枕草子』の瞬間が描かれた第21話。起きる気力もなく床に伏せる定子に、桜の花びらや蛍の光、赤く染まったもみじの葉が降り注ぐ。ききょうが見事な筆致で記した四季の移ろいとともに、定子の心が癒されていく過程が夢うつつの幻想的な演出で映し出された。
とりわけ目を引くのは、ききょうを演じるファーストサマーウイカによる手元の演技。ゆっくりと墨を磨り、筆を濡らしたききょうは十二単の裾を捌きつつ、紙に文字をのせる。その一連の動作が実に雅で、思わず見入ってしまった。
高畑充希が『枕草子』を小鳥が歌うように音読する様も美しい。最後はぴんと空気が張り詰めた冬の早朝、起き上がってきた定子にききょうは頭を下げる。その無言のやりとりで芽生えた二人の確かな絆が胸に染み入る。
定子を一目見た瞬間から心を奪われたききょう。そこにある感情は、恋とも単なる憧れとも言えぬ複雑なものだ。ファーストサマーウイカはこれを“推し”に近い感情と語っている。自己愛の強いききょうが、全てを投げ打っても守りたいと願う定子。以前、まひろに語った「己のために生きることが、他の人の役にも立つような道」をききょうはようやく見つけたのだ。なるほど。今思えば、夢追う誰かを応援する“推し活”に近しい。