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恋愛を超えた2人
脚本家・大石静の凄さとは?

『光る君へ』第21話より ©NHK
『光る君へ』第21話より ©NHK

一方で、まひろと道長の関係性も以前とは変化を見せる。まひろが道長の妾になることを拒み、一度は関係を絶った二人。けれど、どちらも「誰一人として理不尽に命を奪われることのない世を作る」という約束を胸に歩んできた。

今回、まひろは道長の妾にならなかった後悔を語ったが、もしもその未来があったなら二人の間にはこれほどまでの絆は生まれなかったであろう。胸が引き裂かれるような別れを乗り越えたまひろと道長の互いへの思いは、もしかしたら恋愛感情を超えた人間愛に移行しつつあるのではないか。最後の口づけも艶っぽさはなく、恋愛で結びつく男女の関係との決別に見えた。ここから二人は魂で結びついた“ソウルメイト”になっていくのかもしれない。

ききょうと定子の関係もそうだが、こういう対象の二人にしか分からない関係性の機微を描くことに脚本家の大石静は長けている。ここで注目したいのが、大石が過去に宝塚の脚本を手がけている点だ。2015年に上演された『カリスタの海に抱かれて』はフランス革命前夜を描いたオリジナル作品で、どことなく池田理代子による漫画『ベルサイユのばら』を彷彿とさせる。

ところで、この『ベルばら』をはじめ70年代前後の少女漫画で描かれる人と人の関係性は必ずしも恋愛に終始しない豊かなものだった。これは単なる想像ではあるが、おそらく大石もそうした少女漫画で育ったのではないだろうか。大石脚本のドラマ『知らなくていいコト』(日本テレビ系)で吉高由里子と柄本佑が演じた二人も最終的に結ばれはしなかったが、その良質な切なさが後を引く。

話題作からの再共演も見どころの一つである『光る君へ』。第21話のラストには、『最愛』(TBS系)で吉高と共演した松下洸平が、宋の見習い医師・周明(ヂョウミン)役で初登場となった。一瞬だったが、装束をまとった松下の精悍な顔付きに早くも心を奪われる。公式サイトによると、周明は優しく穏やかだが謎めいたところがある人物で、まひろと親しくなっていくとのこと。『最愛』で多くの人を虜にした吉高と松下のケミストリーを早く摂取したいものだ。

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