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『最愛』ファンにはたまらない吉高&松下ペア

『光る君へ』第23話より ©NHK
『光る君へ』第23話より ©NHK

 周明の正体が明らかとなった『光る君へ』第23回。対馬で生まれた周明は12歳の時に口減らしのために海へ捨てられ、宋の船に拾われたという。宋では牛や馬のように働かされ、このままでは死ぬと逃げ出した先で薬師に助けられ見習いにしてもらった、と周明はまひろに語った。

 周明は日本人でありながら、自身のことを宋人と称する。それだけ宋に恩義を感じているのだろう。まひろも身分にかかわらず、試験を受ければ官職を得られる宋に兼ねてより興味を持っており、周明から宋の文化や言葉を教わる。

 明示こそされていないが、まひろよりも年は少し上だろうか。人生の酸いも甘いも噛み分けた周明は物腰が柔らかく、自然な色気があり、まひろはドキッとさせられる。『最愛』(TBS系、2021)ファンにはたまらない、愛おしい時間を吉高由里子と松下洸平が作り出した。

 一方で、正体は明らかとなったものの、周明には依然として謎めいた雰囲気がある。ラストには、まひろが左大臣・道長と知り合いであることを知った周明が朱に「うまく取り込んで左大臣に文を書かせます」と告げる場面があった。その見返りとして周明は宰相の侍医に推挙してほしいと朱に願い出る。

 覚えが早いまひろを「賢い」と褒める優しい顔と、そのまひろを利用してまで地位を得ようとする野心的な一面を見事に演じ分けた松下。だが、不思議と悪い人に思えないのはその瞳の奥に葛藤が見えるからだ。

 まひろに惹かれる気持ちはあれど、周明には為さねばならぬことがあるのだろう。道長に友情めいたものを感じつつも、貧しい人たちに分け与えるために貴族の屋敷から金品を奪う盗賊として暗躍していた直秀(毎熊克哉)のように。それが直秀の最期のような悲劇を招かないことを願うばかりだ。

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