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まひろを癒してくれた宣孝の手紙

『光る君へ』第24話より ©NHK
『光る君へ』第24話より ©NHK

 一条天皇にとっての“忘れえぬ人”は、もちろん定子。彼女が出家した後、2人の女性が一条天皇のもとに入内したが、本人は全く見向きもしなかった。一条天皇は幼い頃から定子一筋で、多くの男性が妾を持つのが当たり前の時代においてはかなり稀な愛情深い男性だ。

 それはとても良いことだが、一条天皇は、定子を思うあまりどんどん周りが見えなくなっている。こと第24回に関してはそれが顕著に表れていたように思う。

 詮子の平癒を願い、伊周と隆家を都に召喚した一条天皇は怒りに任せて2人を配流に処した一方で、「そなたに止めてほしかった」と道長を責める。それはおそらく、結果的に定子を内裏から追い出すことになってしまったことへの八つ当たりなのだろう。

 定子にやっとの思いで再会した一条天皇の恋心はさらに募り、政務もおざなりに。宋との交易をどうするかという話し合いの中でも、「唐物の中におしろいと唐扇があれば中宮のために求めたい」とこの期に及んで道長に命じる一条天皇は、元々あった聡明さが失われ、すっかり色ボケしているように見える。

 まだ高校生くらいの年齢なのだから、仕方ないといえば仕方ないのだが…。麗しくも内面が熟していない帝を絶妙なバランスで塩野瑛久が演じている。

 その幼さの代償を一身に背負っているのが、道長だ。一条天皇の機嫌を損ねず、かつ公卿たちの批判が彼に向かわないようにしなければならない。右往左往する道長はまるで中間管理職のよう。

 左大臣として政権を握っているにもかかわらず、兼家(段田安則)や道隆(井浦新)とは違って、独断的ではないのでつけ上がる者も多い。越前編ではまひろが主人公のラブストーリー、都では道長のお仕事ドラマが進行している。柄本佑の大げさではないコミカルな演技もまたいい。

 まひろにとっての“忘れえぬ人”は道長だが、若くしてこの世を去ったさわ(野村麻純)もまたまひろの生涯“忘れえぬ人”となった。周明に利用されそうになり、挙句には親友を失った深い悲しみの中、まひろを癒してくれたのは「早く都へこい」という宣孝の手紙だ。

 忘れえぬ人がいるとまひろが明かしても、「良い。それもお前の一部だ」と即答した宣孝。口が上手く、為時が懸念するように宣孝は好色ぶりが抜けないが、彼の良さは陰りがないところだ。

 何事も深くは悩まず、良い方に捉える。楽観的で軽いと言えば軽いが、そのカラッとした明るさや、懐の大きさが今のまひろには必要なのだろう。史実に従えば、2人の婚姻生活は長くないが、悩み多きまひろの人生に宣孝は光を照らしてくれるのではないだろうか。

(文・苫とり子)

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