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恋の火花散らす宣孝VS道長。佐々木蔵之介の緩急をつけた芝居に注目

『光る君へ』第25話より ©NHK
『光る君へ』第25話より ©NHK

 長徳4(998)年。新年の挨拶に清涼殿を訪れた安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)は道長にしばらく凶事が続くと伝えた。その予言通り、大雨により鴨川の堤が決壊して大洪水が起きた「光る君へ」第25回。不吉な予感が漂う中、ひたすらに明るかったのが宣孝だ。

 まひろの帰京を祝う席で、流行歌である催馬楽の「河口」を披露した宣孝。〈関の荒垣や 守れども はれ 守れども 出でて我寝ぬや〉。男女が監視の目を逃れ、情交に及ぶ場面を想起させる一節を唄いながら、まひろにアイコンタクトを取る宣孝は完全なスケベ親父だった。

 その熱を帯びた視線に気づいた惟規の苦々しい顔といったら。そりゃあ、親戚のおじさんが姉のことを急に女として見始めたらそういう顔にもなるよね、と思わず同情してしまった。

 そして今回のハイライトは、なんといっても恋の火花散る宣孝と道長の対峙シーンだろう。

「おかげさまで為時の娘も夫を持てることになりました」とさり気なく報告する宣孝の白々しさよ。それでも道長が顔色を変えないと見るや「実は私なのでございます。為時の娘の夫にございます」と宣孝は嬉々として告げた。見開いた目はキラキラ、盛り上がった頬はいつにも増してテカテカしている。究極の煽り顔だ。

 当然、ことの次第を知ったまひろは激怒。「何故そのようなことを…」と問いただすと、宣孝はサラッと「好きだからだ、お前のことが」と告げる。

 まひろは不意打ちをくらい、何も言えなくなってしまった。普段はおちゃらけているのに、ふと真面目な顔で愛を伝える。これが、百戦錬磨の男の高度な恋愛テクニックだ。ラストでまひろに覆いかぶさる宣孝からは大人の色気が立ち上る。

 宣孝の妻も妾もいるのに未だ恋愛市場で幅を利かせる好色漢としての厭らしさと、飄々と時代を生き抜いてきた軌跡を感じさせる渋み。それらを緩急ある芝居で見せる佐々木蔵之介。なるほど、他には考えられない唯一無二のキャスティングだ。

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