道長の嫡妻・倫子と側室の明子のバトル

　定子と彰子が争うこともなく中宮として並ぶ一方、火花を散らしたのが道長の嫡妻・倫子（黒木華）ともう一人の妻・明子（瀧内公美）だ。彰子が中宮になった直後、道長は明子のいる高松殿を訪れる。3人の息子と、幼い姫君を抱きかかえた明子は「いずれこの子も殿のお役に立ちますように心して育てます」と道長に伝える。

　だが、「その子は穏やかに生きたほうがいい」という道長。それは子を思うがこその言葉だが、明子は倫子に負けた気になったのだろう。穏やかだった声色が一変し、息子たちに暗記させた故事集「蒙求」を道長の前で披露させる明子が怖かった。

　そんな中、道長は体調を崩して倒れ、そのまま危篤となる。知らせを受け、駆けつけた倫子は明子の目の前で道長の枕元で「うちでお倒れになればいいのに…」と語りかけた。いつも通りおっとりとした語り口調だが、明子への対抗心がひしひしと感じられる。

　しかし、余裕を見せつけるかのように、道長をしばらく明子の元へ預けると決めた倫子。「どうぞ、我が夫をこちらで看病願いますね」と嫌味ったらしく言われ、明子も負けじと倫子の目をしっかりと見ながら「承知いたしました」と答える。言葉と視線で殺しあう二人の喧嘩は掴み合いの喧嘩より、よっぽど恐ろしくて肝が冷えた。

　一方、まひろは宣孝から道長が危篤になったことを伝えられる。黙っていることもできたのに、妻と密通した相手の状況を伝えるとは、なんて懐が大きい。ただ知っても何もできるわけではなく、まひろはただ道長の無事を願うことしかできなかった。

　だが、その強い思いは通じ、夢の中でまひろに「行かないで」と呼びかけられた道長は目を覚ます。この時、倫子、明子、まひろは似たような着物を纏っていた。だが、まひろだけ少し色が違う。本命の証ということだろうか。どれだけ倫子と明子が争っていようとも、道長の心はただ一人、まひろの元にある。この容赦のなさが大石静の描く恋愛ドラマだ。