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『光る君へ』『虎に翼』に共通する母と子の溝

『光る君へ』第30話より ©NHK
『光る君へ』第30話より ©NHK

 まひろは四条宮の女房達に和歌を教えるにとどまらず、自作した物語を読み聞かせるようになっていた。作者不明となっている「とりかへばや物語」をモチーフにしていると見られる、男になりたい女と、女になりたい男の話「カササギ語り」は女房たちに好評だった。

 一方、娘・賢子(永井花奈)のために物語を書き始めたつもりが、本人は相変わらず興味を持たない。「己の行き方を己で選び取ってほしい」とまひろは教育に力を入れるが、厳しくすればするほど賢子との溝は深まっていく。

 そんな中、賢子は創作に夢中になるまひろの姿に業を煮やし、彼女が書いていた物語の原稿を火にくべてしまった。すぐにまひろが気づき、家は火事にならずに済んだが、原稿は燃えてしまう。まひろにきつく叱られてしまった賢子の悲痛な泣き声から、母親を振り向かせるためにはそうするしかなかった娘の孤独が伝わってきて胸が締め付けられた。

 でも、まひろの気持ちもわからなくはない。女性というだけで何かと制限される悔しさを嫌というほど知っているからこそ、娘には知識を身につけて少しでも選択肢を広げてほしいという思いも理解できる。それなのに為時(岸谷五朗)や惟規(高杉真宙)から教育方針をそれとなく否定され、宣孝が亡くなった今、誰も味方をしてくれないまひろもまた孤独なのだ。

 自分の野望と子育てとの間で揺れ動く母の姿は、奇しくも同じくNHK総合で現在放送中の連続テレビ小説『虎に翼』でも描かれている。同作は日本初の女性弁護士の一人となったヒロイン・寅子(伊藤沙莉)の物語で、父や夫の死後、大黒柱として忙しく働く彼女もまた娘との溝ができてしまった。

 仕事ばかりで家庭を顧みない男性はいくらでもいるのに、それが女性になるとなぜか男性よりも批判される傾向にある。生きる時代は違えど、そんな男女格差を盛り込んだ2つの作品は観る人も他人事ではいられない。

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