父の言葉にまひろの心が震える
「その女にまた会ってみたいものだ」という一条天皇の言葉を受け、道長はまひろに娘・彰子(見上愛)の女房として藤壺にあがることを提案する。一条天皇がまひろ目当てで藤壺に足を運ぶようになれば、彰子との仲も深まると考えたのだ。
「おとりでございますか」というまひろの問いに道長は「そうだ」と即答。このやりとりは以前、まひろが「妾になれってこと?」と訊き、道長が「そうだ」と答えたことと重なる。その賢さゆえに相手の目的をすぐ見抜いてしまうまひろと、嘘がつけず打算を正直に打ち明けてしまう道長。本質的なところは、二人とも変わっていない。
政治の道具として扱われることには抵抗感があるまひろだが、以前より家計のためにどこかで女房として働きたいと思っていたのは事実。熟考を重ねた結果、まひろは娘・賢子を実家に預けて、藤壺にあがることを決意する。
賢子は泣き言を言わずとも寂しそうだが、為時(岸谷五朗)は「任せておけ。母を誇りに思う娘に育てるゆえ」とまひろを安心させる。そして旅立ちの日、為時がまひろにかけた言葉に泣かされた。
時折、涙で言葉に詰まりそうになりながらも「お前が…女子で良かった」とまひろに伝えた為時。まひろは幼い頃から為時の影響で文学に親しみ、才もあったが、女性であるというただそれだけの理由で内裏にあがることは叶わない運命だった。それゆえに為時は「お前が男であったら」と悔い、世間の目を気にしてまひろがやりがいを感じてた代筆の仕事を取り上げたこともある。
それでも自分らしくいられる道を模索し続けた結果、まひろは本来望んでいた形とは違うかもしれないが、内裏にあがることが叶った。その苦労を労うかのような父の言葉にまひろの心は震える。
ぶつかり合ったことも多々あれど、同じ目線で互いを鼓舞し合いながら歩んできたまひろと為時。なんて素敵な親子関係なのだろう。