彰子の人となりが少しずつ明らかに
だが、まひろが唯一後ろ髪を引かれるのは彰子のこと。実家に下がる直前、まひろは彰子と対面。寒い日に庭を眺めている彰子を気遣い、「炭を持ってこさせましょう」とまひろは話しかけた。
すると突如、「冬が好き」「空の色も好き」と彰子は語り始める。その後、別の女房が現れ、御簾を下げてしまった時、彰子は寂しそうな顔を浮かべていた。
自分の気持ちをあまり人には話さない彰子。だから、周りの人は意思がないものと見て、勝手に色んなことを決めてしまってきたのだろう。けれど、本当は慎ましい性格ゆえに遠慮してしまうだけで、彰子は明確な意思を持っている。
少し前に、まひろは彰子が周りの目に隠れて敦康親王(池田旭陽)にオヤツをあげる場面を見ていた。日頃から辺りをよく観察しているまひろだから、彰子の本当の顔に気づけたのだろう。
彰子もまた出会ったばかりだが、この人は自分の話を聞いてくれると判断し、まひろに好みを明かしたのではないだろうか。2人が定子(高畑充希)とききょう(ファーストサマーウイカ)のように、心と心で通じ合う関係性になっていく未来が見えた。
まひろは実家で物語の続きを書いた後、再び藤壺で彰子に仕えたいという旨を道長に伝える。まひろを最後の頼みの綱としていた道長は「まことか!」と嬉しそうだ。
「次第にそなたの物語が朕の心に染み入ってきた」と一条天皇からもお褒めの言葉を預かったまひろ。道長から褒美としてもらった扇には、幼い頃のまひろと道長を思わせる少年少女の姿が描かれていた。
出会った瞬間からお互いに惹かれ合ったまひろと道長。2人が正式に結ばれることはなかったが、時を経てまひろは自分の才で道長の役に立つことができた。それもあの時、身が引き裂かれるような思いをしながら道長の妾になることを拒んだからこそ。切なくも、全ては無駄ではなかったと思える素敵なシーンだった。
(文・苫とり子)
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