「書くことで己の悲しみを救った」
『蜻蛉日記』を書いた藤原寧子(財前直子)の言葉
今更ながらその事実を明かした真意は計りかねるが、身の回りで起きた出来事はもちろんのこと、己の身にふりかかったことも、その時の感情も出来事も全て無駄にすることなく物語に昇華させる姿勢は作家の鏡。
そこには物語に落とし込むことで自分に起きた出来事を客観的に見つめ直し、感情を整理する意味もあるのだろう。
為尊親王、敦道親王と2人の想い人を続けて亡くし、悲しみに暮れる和泉式部(泉里香)にも、まひろは亡き親王との日々を書き残してみてはどうかと勧める。「かつて、書くことで己の悲しみを救った、とおっしゃった人がいました」とまひろ。
おそらくそれは、『蜻蛉日記』の作者・藤原寧子(財前直子)のことだろう。寧子は日記を書くことで兼家(段田安則)の妾であることの痛みを癒した。その熱心な読者であったまひろは彼女の姿勢を受け継いでいる。