一条天皇へ想いを伝える彰子
一方、光る君に育てられる若紫に自らを重ね、その後の展開を案じる彰子。「中宮様はどうなればよいとお思いでございますか」とまひろが聞いた瞬間、その瞳が揺れ、しばらくして「光る君の妻になるのがよい」と答える。
彰子はこれまで意思表示をあまりしてこなかった。それは他者を気遣えばこそであり、一条天皇と深い仲を築いてこなかったのも、彼の亡き定子(高畑充希)に対する愛の深さを理解しているからではないだろうか。だが、若紫に自身を投影し、思いを馳せたことで隠していたはずの思いが溢れ出した。
彰子はまひろに促されるまま、一条天皇に「お上、お慕いしております」と涙ながらに想いを伝える。あまりに純粋無垢でまっすぐな言葉に一条天皇は驚いた様子で、その場では「また来る」とだけ言い残して去っていったが、ついに彰子のもとへ渡った。
その道中、一条天皇は廊下から庭に雪が降り積もる光景を眺めながら定子を思い出す。雪が降るころに定子が旅立ってから数年、彰子は二十歳になっていた。
「いつの間にか大人になったんだな」という言葉に、「ずっと大人でした」と少しいじけたように返す彰子が愛らしい。そんな彼女を一条天皇は「さみしい思いをさせてすまなかった」と抱きしめた。
雪のように降り積もった悲しみもいつかは解ける。まるで雪解けのような2人の演技にじんわりと心が温まった。