伊周(三浦翔平)の闇落ちが止まらない…。
第35回でもう一つ見どころだったのが、過酷すぎる御嶽詣の道程だ。道長たちが一本の綱を頼りに絶壁を登る場面では、源俊賢(本田大輔)が足を滑らせるも、頼通(渡邊圭祐)が伸ばした手を取り、間一髪で滑落を免れた。
その背景では、ケイン・コスギが「ファイト一発」と同じく絶壁を登るリポビタンDのCMを彷彿とさせるBGMが流れる。かつてまひろと道長が逢瀬を重ねる場面で流れた“泣きのギター”もそうだが、相変わらず本作は劇伴が斬新で面白い。
その後、目的地である金峰山寺に向かう道長たち。そんな中、伊周(三浦翔平)は武者を引き連れ、道長たちを襲撃しようとしていたが、計画を知った弟の隆家(竜星涼)が計画を阻む。思い出されるのは、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が道長に「隆家様は、いずれあなた様の強いお力となりまする」と予言した場面だ。
その言葉通り、隆家は出雲守の任期を終えて京に戻ってからというものの、やたら道長に擦り寄っていた。それは伊周よりも道長につく方が得だという打算的な理由だと思っていたが、自分が制止もきかずに花山院(本郷奏多)の御車を射たことで失脚した伊周へのお詫びの意味もあった。
「左大臣を亡き者にしたところで何も変わらぬ。おとなしくさだめを受け入れて穏やかに生きるのが兄上のためだ」と諭す隆家の言葉には弟としての愛情が滲む。
そんな隆家を責めることなく、「帰ろう」と優しく声をかけた伊周。隆家の真摯な思いが実を結んだかと安心したのも束の間、伊周は「道長なぞ狙ったつもりはない。うつけ者め」と高らかに笑い出す。
兄のため最後の賭けに出た隆家の思いを虚しく、伊周はこのまま誰の言葉にも耳を向けずに闇堕ちしていくのだろうか。
(文・苫とり子)
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