恋が結ばれることのない2人
着実に惹かれ合っているまひろと道長。しかしながら、その間に身分の差という壁が立ちはだかる。2人の恋が結ばれることはない。
今後、まひろと道長はそれぞれ別の相手と結婚する。まひろの夫となるのは宣孝。親子ほどの年の差がある彼らが夫婦になるなんて想像もつかないが、宣孝が魅力的な男性であることは第4話の2人のやりとりから十分に伝わってきた。母亡き後、父親である為時との関係が良好ではないまひろにとって宣孝は良き相談相手。
「学問とは何のためにあるのでしょうか。『論語』も『荀子』も『墨子(ぼくし)』も人の道を説いておりますのに、父上はその逆ばかりなさっています」と父親が名声や地位に取り憑かれていることを嘆くまひろに、宣孝は「それは父上も人だからじゃ」と答える。
まひろが自分を間者として左大臣家に送り込む為時に腹を立てながらも、倫子(黒木華)への興味から拒否できずにいるのも人だから。
人間は時に人の道や自分のポリシーに反した行動を取ってしまう。宣孝は、そういう人間の愚かさを受け入れている器の大きい男性なのだ。道長も魅力的な男性ではあるが、大人の余裕という面でいえば、やっぱり宣孝の方が上であろう。まひろの恋の相手は道長意外にありえないと思っていたが、少し心が揺らいでしまった。
一方、道長の妻となるのは倫子。朗らかだが、彼女はやはり腹の中に黒いものを持っている。『竹取物語』で身分の高い男性たちを翻弄したかぐや姫を支持するまひろを、「私の父が左大臣で身分が高いことをお忘れかしら?」とそれとなく倫子が諭す場面ではピリッとした空気が漂った。
けれど、不思議と倫子には嫌な感じがない。五節の舞も本来ならば倫子が担うはずだったが、花山天皇に見初められては困るとまひろにお願いするなど、計算高くはある。
しかし、彼女は少女漫画でいうところの、最初は主人公をいじめていたが、後から親友になる女の子ポジション。今だってまひろに懐かれて内心悪い気はしておらず、まるで自分に忠実な飼い犬のように可愛がっている節すらある。そこに恋愛が絡んだら、2人の関係はどうなっていくのだろう。
願わくば、意外にバランスの良い彼女たちの微笑ましいやりとりを見ていたい。
(文・苫とり子)
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