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毎熊克哉の早すぎる退場…”直秀”とは一体何者だったのか? その役割とは? NHK大河ドラマ『光る君へ』第9話考察レビュー

text by 苫とり子

吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。第9話では、まひろと道長にとって人生のターニングポイントとなる事件が起きる。今回は、本作における最重要人物・直秀と役を演じた毎熊克哉を中心に物語を振り返る。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

直秀の早すぎる”旅立ち”

『光る君へ』第9話より ©NHK
光る君へ第9話より ©NHK

「海の向こうには彼の国がある。海には漁師がおり、山にはきこりがおり、彼の国と商いをする商人もおるーー俺は鳥かごを出て、あの山を越えていく」

直秀(毎熊克哉)が、“遠くの国”へ旅立った。その最期をまだ受け入れることはできないが、「光る君へ」第9話を振り返るとともに、直秀がこの物語に残したものとは何だったのかを考えていきたい。

散楽一座の一員であり、盗賊でもあった直秀。都を間もなく出ていく予定だったが、東三条殿に盗みに入った散楽一座は検非違使に引き渡されてしまった。だが、彼らはまだ何も盗んでおらず、人を殺めたわけでもない。のちに盗んだ金品も貧しい庶民に分け与えていたことが明らかになる。

本来ならば、鞭打ちの刑に処された後に放免されるはずだった。獄に入れられた散楽一座の者たちも、きっともうすぐここから出られるーーそう信じていた。直秀の脳裏には、まだ見ぬ海が広がっていたに違いない。しかし、まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)が鳥辺野で見たのは彼らの変わり果てた姿だった。

なぜ、彼らは死ななければならなかったのか。道長は「手荒なことはしないでくれ」と検非違使に心付けを渡していた。だが、結果的にその行動が直秀たちを死に至らしめてしまったのだ。

道長の予測では、散楽一座の面々は流罪となるはずだった。しかし、彼らを都の外まで送り届ける役人が面倒だと思ったのか、道長から心付けを渡された検非違使がそうするように命じられたと曲解したからなのかはわからないが、鳥辺野という当時、遺体が風葬・鳥葬されていた山中に連れて行かれ、そこで殺されてしまった。

いや、でも息を吹き返すかもしれない。そんな一縷の望みにかけるも虚しく、まひろと道長は直秀たちの遺体を埋葬する。「余計なことをした!」「すまなかった!」と何度も何度も、もう届かぬ謝罪を口にする道長。その悲痛な慟哭が胸の奥を締め上げる。

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