「男女の間に、友情は成立しますか?」という問いへの答えとは
そのあとは、最終回のお手本のような展開が続く。
夜々に一方的に思いをぶつけてきた迷惑な同僚・相良(泉澤祐樹)や、かつて夜々が好きだった“むらさき”ちゃん、紅葉の生意気なバイト先の後輩たち、紅葉の高校時代の友人・篠宮(葉山奨之)、ゆくえが地元で見たかつての子ども力士……が続々と登場する。
面白かったのは、椿が同僚たちから「無個性ですって言ってるけど、個性強い」と思われていたこと。どれだけ周囲から浮かないようにと振る舞ったって、自分のすべてを隠すことはできない。伝わってしまうし、案外それが好意的に受け止められていることもある。
つまづいて書類をぶちまけ、恥ずかしそうに笑む椿を一段と愛おしく感じた。
気になっていた美鳥(田中麗奈)だが、椿たちが出て行った後、ちゃんと戻ってきた。もう戻ってこないのでは?という不安が杞憂に終わってほっとした。入れ代わり立ち代わりでやって来ては思い思いに話をしていく4人を見て、美鳥はやっぱり宿り木みたいだな、と思った。
「勘違いされる人生だったけど、だからこそ間違えないものが見えた」美鳥だから、4人がきちんと美鳥を見ていることがわかるし、4人の話が理解できる。
そう、結局は理解なのだ。理解できること、理解できないけど理解したいと思えること。人間関係の下敷きは、これに尽きる。そしてそれは自分の主観に基づくべきで、“みんな”の意見に左右される必要はない(もちろん、“みんな”でいることも悪いことではないけれど)。
赤田と峰子は餃子につけるたれがまったく異なるが、生活を共にしている。それは相手のことを理解したいと思っているから。峰子が赤田に、ゆくえについて聞いたのも同じだ。
そして、男女の友情をめぐって対極の価値観を持っているゆくえと峰子だって、ゴミ袋が入っている袋をゴミ袋として使う共通点があった。
「男女の友情」をテーマとはしていたが、終わってみれば「ゴミ袋をどこに置くか」と同じレベルの問いなのだと言われたような気がする。男女とか友情とか恋愛とか、そういうものが絡んでくると途端に持論を振りかざし熱くなりがちなわたしたちをそっと諭すように。
すべてのことは、人それぞれ。たとえ価値観が違っても、理解したいのなら理解しようと努めればいい。そんな原点にして究極のことを、説教くささ抜きに感じさせてくれる脚本に感謝と称賛を贈りたい。